2007/01/07

トム・ダウド/いとしのレイラをミックスした男

トム・ダウド いとしのレイラをミックスした男 去年、渋谷まで見に行った映画がDVDで出てたんですねえ。日本版のサブタイトルはとてもいただけませんが、内容がとてもおもしろかったのでご紹介。

 トム・ダウドは、わたしが初めて意識したレコーディング・プロデューサーで、どんな人なのか昔からすごく興味がありました。この映画はトム・ダウド本人、アトランティック・レコードの関係者、彼が手がけたミュージシャンたちの証言をうまく構成し、彼の数々の偉業が映像と音をとおしてわかるように作られています。

 で、メインでしゃべるのがトム・ダウド本人なのですが、多くの名作を生んだ敏腕プロデューサーというイメージが先行していたせいか、もっと気むずかしくてコワイ人だとばかり思っていました。まさかこんなにおしゃべりで陽気な人とは! でも、その早口の弾丸トークから、アイデアが次から次へとわいて出る頭のよさと、プロデューサーという仕事が心底好きな気持ちが伝わってきて、ますます好きになってしまいました。ダイヤル式だったコントローラーをスライド式にしたアイデアを嬉々として話すときの、あの誇らしげな、それでいて少年みたいな表情ときたら! 孫ほども歳の離れたミュージシャンのプロデュース風景もおもしろかったなあ。

 トム・ダウドのなにがすばらしいかと言えば、ミュージシャンのよさを最大限に引き出すにはどうしたらいいか、そのことに必死で心をくだき、それでいて、自分を前面に押し出すことのない徹底した裏方ぶり。最新の機器をあやつりながら、ミュージシャンが持つエモーションを、レコードで再現しようと努力するんですよね。「彼は音楽に命を吹きこむ」と証言した人がいましたが、まさにそのとおり。どんなにすぐれた楽曲も、どんなにすぐれたミュージシャンも、命が吹きこまれなければただの楽譜であり人形でしかないですもん。そういう意味でも、Language of Music という原題をタイトルに生かしてくれればよかったのに……と、ちょっぴり残念です。

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